◆第三十三話:白虎隊・津川喜代美◆
■津川喜代美(つがわ・きよみ) |
■高橋誠八重固(百石)三男。母は有賀惣左衛門三女えつ子。喜代美は幼名を八三 |
郎といい津川瀬兵衛(百五十石)の養子となった。津川の賜邸は郭内米代二之丁に |
あり、十歳のとき藩校日新館に入学し尚書塾一番組に編入され度々賞賜を受けた。 |
■ある日、同窓数人と学校よりの帰途、蛇が道に横たわっていた。友人らはこれを |
殺そうとした。喜代美はこれを見て、無益の殺生はすべきでない。わが技倆を示す |
に足らず、また博愛は昆虫にまで及ぼすべきものであるといって止めた。衆もこれ |
に従った。またある日母に従って中田観音に詣で、茶店に憩んで食事をとった。店 |
前に獰猛そうな犬がうずくまっていたが、店を出るに際し残った肴を与えようとし |
たところ犬は躍りとびついて、あやまって喜代美の拇指を噛んでしまった。すると |
とっさに血のまだ出ぬうちに指端を噛み切って捨て、これで犬歯の毒が身に廻る心 |
配はありませぬと母に告げ、平然と包帯をして母を驚かしたという。 |
■風雲急を告げ、慶応四年(一八六八)三月白虎士中二番隊に編入されてフランス |
式調練法を修めたが、国事の日々に非なるを見て概歎し、一刻も早く戦場に出て奉 |
公の義務の果たさんことを希った。折しも春日和泉の白虎士中一番隊、原隼太の白 |
虎寄合一番隊、太田小兵衛の白虎寄合二番隊の越後方面に出陣したのを見て羨望お |
くあたわず、同方面に出陣中の朱雀士中四番隊士である長兄金吾、次兄八郎に対し |
八月十一日の日付にて「…壹番白虎並寄合組御表へ出張仕候、小子義は當方にて安 |
楽いたしおり誠に以て不安事には候得ども是以無據次第に御座候…云々」と書を送 |
った。しかるに西軍の進撃は急で、八月二十二日、喜代美が属する士中二番隊も戸 |
ノ口原へと出陣することになった。喜代美は、 |
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かねてより親の教えのときはきて
けふのかとてそ我はうれしき |
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と、その首途に心のほどを詠じて喜び勇み出陣して行ったのであるが、戦利あらず |
翌二十三日、飯盛山上に後退し自刃した。ときに喜代美十六歳。 |
■法名を清進院良誉英忠居士という。 |
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